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坂本雄三先生に聞く

住宅・建築物の省エネに関する第一人者である独立行政法人建築研究所理事長の坂本雄三先生に、これからの住宅の方向性等についてお話を伺いました。

さかもと ゆうぞう
坂本 雄三氏
独立行政法人・建築研究所理事長、東京大学名誉教授

専門は建築環境工学。熱と空気の数値シミュレーション、住宅・建築の省エネルギー。
国土交通省社会資本整備審議会・建築分科会・省エネルギー判断基準等小委員会委員長
経済産業省・ゼロ・エミッション・ビルの実現と展開に関する研究会・委員長
(社)空気調和衛生工学会会長(2010.5〜2012.5)
著書として、『省エネ・温暖化対策の処方箋』(日経BP企画,2006)、『建築熱環境』(東京大学出版会,2011)などがある。

地球温暖化問題や、エネルギー問題を踏まえた、これからの住宅の省エネ性能のありかたについて教えてください。
現代の省エネルギーは我慢してエネルギーを節約するというものではありません。私たちの日々の生活に必要な室内の暖かさや涼しさ、明るさ、きれいな空気、そして安全な水やお風呂、便利な家電製品による家事や情報などをしっかり確保しつつ、エネルギーを可能な限り有効に使うというのが21世紀における省エネルギーなのです。そのためには、建物の外皮(外壁や窓、屋根、床などのこと)を断熱したり、窓から入り込む日射をコントロールできるようにしたり、効率の高い設備機器を設置したりする必要があります。太陽光発電パネルを設置してエネルギーを造りだすということも、可能であれば求められます。
住宅の断熱性能や日射コントロール等の躯体性能の重要性について、先生の考えをお聞かせください。
日本の住宅の場合、暖冷房で使うエネルギーは全体のエネルギーの30%前後と言われています。ですから、たとえものすごく断熱をして無暖房住宅にしたとしても、まだ70%のエネルギーが残ります。したがって、省エネの成果をあげるためには、給湯や家電などの設備の省エネルギーも併せて遂行しなければなりません。しかし、断熱のご利益というのは、暖房負荷や冷房負荷を削減し、暖冷房のエネルギーを低減させるだけではありません。断熱によって冬期に室温が自然に高まるということは、結露を防いだり(それによってカビの繁殖や内装材の劣化が抑えられます)、ヒートショックによる脳血管障害の発症リスクを低下させたり、省エネには直接関係しない良い効果もいっぱいあります。断熱を高めたり、夏期の日射コントロールをきちっと行ったりすれば暖冷房の効き目がよくなりますので、エアコンの空気の流れが建物全体に行きわたるように空調の工夫を行えば、冬暖かく夏涼しい家がローコストで実現し、我々は一年間を通して豊かな気持ちで生活することができます。私はこうした「豊かさの実感」というものが21世紀の日本人が求める価値の一つになっていくものと考えています。
新制度である低炭素認定住宅の意義について教えてください。
2012年の省エネ基準の改正では、新たに一次エネルギー消費量に対する基準が設けられましたが、断熱性能などの外皮の基準のレベルは1999年基準のレベルのまま据え置かれました。しかし、実際には1999年基準のレベルよりも高い省エネ性能を持つ住宅はすでに沢山建てられていますので、そのようなレベルの高い住宅も国の行政の中で認めていく必要があります。それで、『エコまち法』という法律を制定し、その法律の中でそうした省エネ性能の高い建築物を、低炭素認定住宅(あるいは建築)として認定することを定めました。また、国の住宅性能表示制度の中でも、このレベルの住宅の表示が認められる予定になっています。低炭素認定住宅の省エネレベルは2012年基準のレベルより10%だけ一次エネルギー消費量が少ないレベルですから、このレベルはそれほど高コストにならずに達成できる現実的な省エネ目標であるということが言えましょう。また、次の省エネ基準(時期は不明)のレベルになるという言い方もできるかもしれません。私の見方では、太陽光発電装置を設置しなくても、一次エネルギー消費量で50%の削減くらいはそれほど無理なく(つまり高コストならず)達成できると思います。さらに、このように十分な省エネを施した住宅に太陽光発電装置を取り付ければ、ゼロエネ住宅になります。一次エネルギー消費量の計算法が確立し、さらに低炭素認定住宅のレベルが明示されたことによって、省エネ住宅と言っても様々なレベルが有り得ること、また、それらの難易度や初期コストも異なることから、省エネ住宅に関する議論が一層活発になるものと予想されます。そうなれば、国にとっても国民にとっても大変好ましい状況になるのではないでしょうか。
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