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低燃費住宅(高気密・高断熱住宅)と住宅の健康・快適性能との関係

−住まいの中の「低温」の健康リスクは想像以上に大きい−

近畿大学 岩前篤教授

1.
住宅の断熱性能と居住者の健康性に関する調査

平成14年〜20年の間に新築住宅に引っ越された約2万人の方々を対象とした、住まいの健康影響に関するアンケート調査を行っています。
日常の諸症状から持病に至る15の健康症状について、「(1)以前の家で出ていなかったか、出ていたか? (2)新しい家で生活するようになって出ていないか、出ているか?」という単純な質問をしました。
従来、「断熱」は、「省エネ」と「快適」というキーワードで語られてきました。しかしこの調査は「断熱」と「健康」の関係をつかもうとするのが目的でした。「快適」と「健康」は似ていますが、私たちが日常生活を営む上では、健康はとても重要な意味を持ちます。
今回の調査では、住み替え後の住宅の省エネ性能についても質問しており、省エネ性能と健康との関係も明らかになっています。

2.
「次世代省エネ基準」よりさらに断熱性能を上げると、健康改善効果が一層高まることが明らかに

住み替え前に症状が出ていたという人の中で、住み替え後に症状が出なくなったという人の割合を健康改善率と名付けました。調査の結果、右図の通り、統計的に有意になった全ての症状について、住み替え後の断熱性が高いほど、健康改善率が増加しています。
特に注目すべきなのは、G4よりもG5の方が、改善程度がより大きいということです。G4は平成11年基準(一般的に言われる「次世代省エネ基準」)相当ですが、そこからさらに断熱性能を上げることで健康改善効果がより一層、高まることが明らかになりました。断熱が健康に大きく結びついているというのが、この調査の結果です。
先にも述べたように、従来、断熱は住宅の省エネと快適性向上が目的でした。欧米と比べ暖房消費エネルギーが小さく、効率の高いエアコンの利用が進んでいる我が国では、断熱の省エネ効果は余り高くないと言われており、G4程度が理想的と考えている住宅エネルギーの専門家もいます。確かに、エネルギーの観点だけで考える場合、このことは間違いでないかもしれませんが、そこに住む人の健康を考えると、H11年省エネ基準よりもより高い性能が有効なのです。

3.
欧米との暖房の考え方の違い

日本では、暮らしに合わせて温度を変化させ、人が居るところしか暖房しないというのが一般的です。正確にはこれは採暖と呼びます。暖房とは、部屋を暖めることなので、人がいなくても暖房を続けます。
欧米では、家の中の環境を重視して、全館で連続暖房するのが普通です。こうするとエネルギーが無駄なように思えます。確かに、一昔前のデータでは、ドイツの方が暖房エネルギーは日本よりもたくさん使っていました。しかし近年では、ドイツでは住宅の断熱性能がどんどん上がっており、私たちよりも少ないエネルギーで、より健康で快適な生活を手に入れ始めているのです。

4.
室内の温度差が生む怖いヒートショック

私たちは、いわば「我慢の生活」により、暖房エネルギーを余り使ってこなかったのですが、これが単なる我慢ではなく、健康被害や死にもつながっていることはあまり認識されていません。実は、住まいの中の「低温」のリスクは想像以上に大きいことが明らかになってきています。
図は東京における、入浴中の死者数と平均気温の推移を表したものです。気温がグンと下がる12月から2月の死者数が急増しています。この時期、入浴中の急死者数は交通事故による死亡者数の約6倍にも上っているのです。
寒い季節に事故が増加するのは、低温からくる「ヒートショック」が原因とされています。ヒートショックには「急激な温度変化によって、血圧の急変動などが生じ、身体に大きな負担をあたえる」ことと、長期間にわたって低温にさらされた人体が徐々に抵抗力を失い、病気になり易いことの二つをいいますが、特に、入浴中の体調不良や死亡の大きな要因になっています。低温の部分があることで、安心できるはずのわが家が、実は危険な場所になってしまっています。
住宅の断熱性能を上げて、浴室やトイレと、他の生活空間との室温変化を少なくし、危険な「低温」の場所をできるだけ少なくすることがとても大切なのです。

いわまえ あつし
岩前 篤氏
近畿大学 建築学部学部長 建築環境システム研究室 教授・博士
1961年
和歌山県生まれ。
1986年
神戸大学院工学研究科を修了後、大手ハウスメーカーに入社し、住宅の断熱・気密・防露に関する研究開発に携わる。
1995年
神戸大学にて博士号を授与。
2003年
同社を退社したのち、近畿大学理工学部建築学科に助教授として就任。
2009年
同教授
2011年
新設された建築学部の学部長に就任し、現在に至る。
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